ある新築助成制度の残念な真実
茨城県は、国内有数の林業県です。
栃木・福島県境の山々には、杉や桧の造林があり、
良質な建築用構造材や内装材を生産しています。
茨城県では森林湖沼環境税を用いて、
この県産材の良さを普及啓発するため、
木造住宅の新築やリフォームに対して助成を行っています。
これまでは年間300棟もの住宅に対し助成が行われ、
毎年300もの家族が、その恩恵を受けてきました。
先日、これまでと内容が一新された平成30年度の助成制度が発表になりました。
残念な事に、今年の申請資格はとても門戸が狭いものでした。
こんにちは!
新築・注文住宅、リフォーム(増改築)で、あなたの期待に応えます。
自然素材で木の家造り、茨城県つくば市のヒダモク三代目、
快適住宅アドバイザー&ホームインスペクター(住宅診断士)の肥田です。
茨城県では、従来「柱材プレゼント」事業として、
抽選で20万円/棟の助成を毎年300棟に行ってきました。
賛否両論はありますが、県内の木造住宅振興に一役買っていたと思います。
◎どんな助成制度?
今年度は、「いばらき木づかいチャレンジ」事業として、
棟数は減りますが、従来の5倍の100万円の助成が行われます。
http://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/rinsei/shinkozei/forest/contents/04/index.html
これ自体に異論はありません。
むしろ、国産材県産材を積極的に用いた家造りをしてきたヒダモクは
大歓迎です。
問題は、その申請条件です。
これまでの「柱材プレゼント」と、大きく変わった点が1つあります。
それが、
⑤建物全体の木材使用量(材積)が25㎥以上であり,伐採の合法性が証明された地域材を100%使用すること
(店舗併設型住宅の場合は,住居部分の木材使用量が25㎥以上であること)。
です。
一般的な木造住宅の木材使用量は、構造材・下地材併せても0.5m3/坪です。
25m3以上用いるには、単純計算で50坪(≒165㎡)以上の住宅新築が最低条件になります。
戸建て住宅の床面積は、年々縮小傾向にあります。
国交省によれば、
H28年度の茨城県の新築住宅の平均床面積は32.9坪(108.55㎡)です。
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
その場合、
木材使用量は約16.5m3です。
25m3に約8.5m3届きません。
この不足分を補う方法は、内装材を無垢材仕上げにすることです。
壁・床・天井を無垢材で仕上げるのです。
県産材の一般的な無垢フローリングのサイズは、
長さ4m×幅12cm×厚1.5cmです。一坪貼るのに8枚必要です。
一坪の面積を無垢板仕上げにするとその材積は、
4(長)×0.12(幅)×0.015(厚)×8(枚)=0.0576m3
8.5m3を満たすには、
8.5÷0.0576≒147.57坪
33坪の戸建て住宅で、壁床天井の合計面積が150坪にもなる住宅は有り得ません。
「申請資格の25m3以上の木材使用量の根拠を教えて下さい。」
と、茨城県の林政課に電話してみました。
明確な回答は未だに頂けません。
残念ながら、
今年度の「いばらき木づかいチャレンジ」は、
40坪以上で、その内装のほとんどを無垢仕上げにする住宅、
もしくは、
板倉工法などの特殊工法でつくる住宅
しか、申請条件を満たすことが出来ません。
◎誰のための助成制度?
これらの戸建て住宅の建築費用は少なくとも3000万円程度必要です。
それだけの予算を組んで家造り出来る人に100万円の助成制度が必要でしょうか?
「いばらき木づかいチャレンジ」の詳細が送られてきた時、
ヒダモクは、精査せずにHPやニュースレターなどで告知してしまいました。
告知した後で、「25m3以上」という、とてつもない障壁の大きさに気付きました。
HPや「ひだもく通信」をご覧になった方から、
「条件が満たせるなら、ぜひ申し込みたいのですが。」
と、数件の相談をいただきました。
良かれと思ってお知らせしたことで、逆に残念な思いをさせてしまいました。
この場を借りてお詫びいたします。
◎行政へのお願い
潤沢な予算を持って、住宅を新築したり、リフォームする方は多くありません。
だから、助成制度の利用を考えます。
本当に県産の木材の利用促進を図るのであれば、
「自分達の予算では、合板フローリングで我慢するしかないけれど、
本当は無垢フローリングでの暮らしがしたい。」
など、1ランク上のマイホームを望むご家族が申請可能な助成制度をお願いします。
無垢材に囲まれた、快適な空間を体験して、なお且つ、
無垢の内装材への助成制度の存在を知れば、
「我が家の床も無垢フローリングにしようか!」
そう考えるご家族は、少なくないとヒダモクは思います。
ヒダモクは、つくば市を中心に、
手に触れるところは、地元の無垢の木や珪藻土・クロス・畳など
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